最近のトラックバック

読書メモ

2018年8月15日 (水)

『ピラミッド』  ヘニング・マンケル  創元推理文庫

 刑事ヴァランダーシリーズの最新刊だが、内容は若き日のヴァランダーで、後のCWAゴールドダガー賞を受けた作品より、昔の話である。このシリーズは長編が多く、5つの中短編集というのはめずらしい。

 スウェーデンのミステリーといえば、1970年代のマルティン・ベックシリーズが有名だが、こちらは1990年代を代表するシリーズと言われる。どれも緻密な筋運びと達者な文章で、いつもおもしろく、この中短編集も例外ではなかった。

 主人公のヴァランダーは、どことなくそそっかしく愛嬌があって、スーパー刑事ではない。ミステリーとしても、ハラハラドキドキというより地道な捜査の展開で読ませる本である。たとえば彼は、ピラミッドの三角形の絵を描き、そこに捜査でわかったことを書き加えて、懸命に考える。自分が「考える警官」であるという自覚もある。
 
 著者は2015年に亡くなってしまった。シリーズは全部で11作、訳者の柳澤由美子さんは、未翻訳の2作を訳されているとか。このシリーズの人気は、彼女の名訳にも負うところが大きい。楽しみにしよう。

Img_0118
(主人公は男性刑事ですが、料理・洗濯・掃除を当たり前のようにこなしながら、捜査に当たっています。また容疑の妥当性をいつも考えており、つかまえればいいというものでもないと思っているらしい。読んでいて、北欧社会に根付く社会正義意識の強さを、感じることがあります)

2018年8月13日 (月)

『リウマチ患者さんのQ&A』(第2版)  日本リウマチ財団  2017.12.22

 この本は春に今の医者に替わったときに、必要で買ったものである。A4版100ページほどのパンフレットのようなものだが、とても役に立った。
 私は20年ほど前からのリウマチ患者で、ずっとMTXとステロイドを飲んできて、それなりに調子はよかった。去年秋の大病をきっかけに病院を替わったところ、新しい医師は「その処方は古い。副作用が心配だ」とおっしゃる。私はあわてて新知識を得ようと、ネットを見たり本を探したりした。なかなかいい本がない。みんな少し古いのである。私は自分に処方されるらしい「新薬」、バイオ製剤について知りたかった。

 この本は去年の末に出て、日本リウマチ財団のホームページに出ている記事が、もとになっているようだ。生物学製剤、つまりバイオ製剤が、もう新薬とは言えないほど普及しているのが、よくわかった。種類も多く、その効き方とか薬価などについて、とてもわかりやすく書いてある。ときに難しい内容もあるのだが、免疫の話はだいたいが面倒なものなので、我慢して読むしかなかった。

Img_0134
(母が亡くなって疲れが出たのか、今までの薬のエスケープ現象なのか、検査結果が急に悪くなり、抗リウマチ薬がまた替わりました。朝の強張りが少し出て、両肩が痛く、水泳に差支えが出ています。でも見たところは普通らしく、患者を知らない人には、まず全く理解されませんね。家事や外出はできています)

2018年7月 5日 (木)

『太平洋戦争下の学校生活』   岡野薫子  平凡社ライブラリー

 著者は1929年、東京生まれで、女学校生活と太平洋戦争が、ほぼ重なる世代である。亡くなった母より5歳ほど下で、須賀敦子と同い年。戦争の生々しい記憶を抱えて生きてきた、最後の世代と言えるかもしれない。実は著者は私の出た学校の先輩に当たり、月末にその学校の仲間と、この本の読書会をすることになっている。500ページ以上ある大作だが、読み上げなければならない。

 母は終戦までずっと、「この戦争は正しく、勝っている」と思っていたそうである。兄が軍人だったせいもあるだろうが、この本にあるような教育を受けていたら、そう思い込むほうが普通であったろうと感じた。著者は思い出を感傷的に語る人ではない。当時の勅語や詔書、教科書や新聞記事などを豊富に引用し、記述にはかなりの客観性がある。回想にはこんなものも。

個が抹殺され、そのことでかえって得られる安らかさも、ないとはいえなかった

声を揃えて歌う気持ちよさ。きれいな合唱にするには、心を一つにあわあせなくては駄目である。合唱曲としてのこれらの歌(出征兵士を送る歌など)は、"億兆心を一にする”ために、最大限の力を発揮した

 母の姿を思い出すと、この記述には、ほんとうに納得できるものがある。教育は恐ろしいのだ。まだ読み始めたばかりで、感想らしいことも書けないが、いずれ続きを書きたい。母の子供の世代として次の世代に、伝えなければならないことがあるような気がしてきた。

Dsc01024_3
(今回の読書会では、前半の3分の1が対象なのですが、それでもけっこうあります)





2018年6月 7日 (木)

新版 ステロイドがわかる本『』   宮坂信之・編著

 もっと楽しい本はないのかと言われてしまいそうだが、豊富に時間が残されている身ではないので、必要な本から手にすることになる。
 ステロイドというとすぐに「副作用」という言葉を連想し、顔をしかめる人が多いが、実際にはたいていの人が、一度はお世話になっている薬である。皮膚炎、ぜんそく、花粉症・・・。私は20年近く、リウマチの治療のために飲んできた。最初は5ミリ、のちに3ミリになった。それがこの3月末に、あっという間に終わりになり、それから何となく調子が整わない。たぶん離脱症状なのだろう。痛みは生活の意欲を削ぐ。

 リウマチは最初の1年半くらいは合う薬が見つからず、絶えず全身がきしむように痛んだ。ステロイドが出たときは、副作用は怖かったけれど、痛みで眠れないようなことはなくなり、やはり感謝した。必要なときには必要な薬だと、つくづく思った。

 Img_0055_2
(患者や家族向きに、ていねいな説明がある本です。こういう本は最新のを買うこと)

 ステロイドは自分の副腎で、毎日作り出されているらしい。それが薬として服用するようになると、副腎がさぼるようになってしまうのだとか。20年も飲んでいたのだから、私の副腎は作り方をすっかり、忘れてしまったのに違いない。70にもなって思い出すのかしら? 医者に聞いたら「時間がかかるかもしれないけど、出るようになる」と。
 わが副腎に、期待するしかないようです。




2018年6月 2日 (土)

『冷凍保存レシピ』   鈴木徹・監/牛尾理恵・料理  朝日新聞出版   

 300種ほどの食材の、冷凍と解凍のテクニックが紹介されている本で、豊富なレシピも載っている。似たような本は多いだろうが、新聞社らしいわかりやすさと、情緒のなさ(!)が私は好きだ。料理は愛情だ、なんていうのは苦手なので・・・。

 下味をつけたり、下茹でをしたほうがいい食材がたくさん出てきて、忙しい一家の料理番や、小人数の家族、昼間出かけると疲れてしまい、夕飯の支度に難儀する私のような高齢者向き。大型本ではないので、本棚でもじゃまにならないのもいい。

Dsc01015
(もうちょっと情緒のある本も読んでいますが、それらはいずれまた)

2018年5月30日 (水)

『医者には絶対書けない幸せな死に方』  たくきよしみつ  講談社+α新書

 シニアには必要な情報が載っている本である。ぎょっとするような題だが、現実がそうなのだからしかたない。著者はデジカメやパソコンの指南書を、わかりやすい上質な文章で書いている人で、福島出身・在住だったが、原発事故で日光に越した。その関係の著書もある。
 見出しをところどころ紹介するだけで、内容が想像できると思う。

死に方の理想と現実
老衰ではなかなか死ねない
「看取り医」を見つける難しさ
癌治療のやめ時と病院からの逃げ時
難しい認知症診断
「別人」になり変わる境界
成年後見制度の恐ろしさ
死に場所としての施設を見つける技術
「主役」の尊厳を軽視する日本の医療・介護現場

 これではたしかに、医者には書けない。
 94歳の母は、自分の希望を語る人ではなかった。私はどうしたらいいのだろう・・・。

Dsc010072

2018年5月17日 (木)

『東方年表』掌中版   平樂寺書店

 これも奈良土産なのである。買ったのは奈良博、つまり国立奈良博物館の売店。文庫本より小さな150ページ余の本で、文章などはない。中国、朝鮮、日本の暦と西暦が並んでいるだけ。初版は1955年で2013年に37刷。1ページ目に神武天皇1年=前660年=周・敬王とあり、最終ページは2020年となっている。

 時代小説だの歴史の本だのを読んでいると、私はいつの年月日のことなのだか、さっぱりわからなくなってしまう。それで買いました。文庫本より小さい本だが、机上版の大きいのもあるそうだ。

Dsc01004_2
(まるで面白くない本で、ネットでもわざわざ注文しなかったでしょう。旅先で巡り合ったものです)

2018年4月19日 (木)

『佐野洋子の「なに食ってんだ」』   佐野洋子  NHK出版

 佐野洋子の遺した絵本、エッセーなどから、食に関係した文を集め、絵や写真とともに食事典。挿絵は佐野自身が描いたもの、料理の写真は再現したものなので、たぶん息子さんの協力があるのだろう。食いしん坊で料理上手でもあった佐野洋子の魅力が、ずんずん伝わってくる楽しい本である。

Dsc00893

 レシピ本ではないので、料理の参考にはならない。でも無類におもしろい。子供のころの中国の思い出、お母さんの餃子の話、トンカツの肉をたたきすぎたこと、すっぱい焼きそばの作り方・・・・・・。

 佐野洋子は2010年に72歳で亡くなってしまった。残念で寂しい。

 ところでこの本の編者、オフィス・ジロチョーって何者なんだろう?

2018年3月30日 (金)

『〈女帝〉の日本史』   原武史 NHK出版新書

 日本はどうして女性政治家がこんなにも少ないのだろうか。教育などは均等に行き渡っているというのに。この本の書き出しは、こうした疑問から始まっている。いわゆる女性史の本とは違うと直感的に思い、読んでみることにした。直感は当たっていたようで、もうじき元号が替わろうという今、時宜を得た新書である。帯には「東アジアとの比較で日本をとらえ直す野心作」。
 終章から引用する。

日本で近代(明治)以降に強まった、女性の権力を「母性」や「祈り」に矮小化してしまう傾向は、(中略)女性の政治参加が憲法で認められたはずの戦後にあっても、女性を権力から遠ざけるという影響を及ぼしているように思われます。こうした状況が続く限り、日本で女性議員を増やし、女性の政治参加を増やすことは根本的に難しいと言えます。それを可能にするためには、(中略)男系イデオロギーによって隠蔽された「女帝」の日本史をもう一度掘り起こし、いまなお根強く残るジェンダー役割分業観を歴史的に相対化する視点を養わなければなりません。本書はまさにそのために書かれたことを、最後に強調しておきます

P1050833
(歴史的に相対化って、容易なことではありません。漢字も満足に読めないようでは無理です。ちなみに、原武史の『昭和天皇』『昭和天皇実録を読む』(ともに岩波新書)も、たいへんおもしろいです)
 

2018年3月16日 (金)

『陰謀の日本中世史』  呉座勇一  角川新書

 ベストセラー新書『応仁の乱』の著者が書き下ろした話題の本。扱っているのは保元・平治の乱、実朝の暗殺、本能寺の変など、だれでも知っている歴史上の大事件ばかり。それらにまつわるさまざまな「陰謀論」を、最新の学説でひとつひとつ検証し、トンデモ学説を一蹴するというのが、この本の大きな目的と、著者は前書きにも後書きにも書いている。最近はトンデモ学説の本があふれているのだそうで、そうした歴史のゆがんだ解釈から身を守るために、この本を読んでもらいたいと。著者はまだ30代、わかりやすくしっかりした文章で、70のバアサンでも楽しく読めた。
 歴史なんかどうにでも解釈できるというのが、偏らない歴史教育ではないのだ。

P1050817_2
(笑ったのが、著者が書いている「学者はその研究対象に似てくる」という話。たとえば公家の研究で、公家の気持ちになって資料を読解し続けていると、しまいには自分も公家に似てきてしまうのだそうです。もちろん研究者ですから、客観性をなくすわけではありませんが・・・)

より以前の記事一覧

2018年8月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ