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読書メモ

2018年6月 7日 (木)

新版 ステロイドがわかる本『』   宮坂信之・編著

 もっと楽しい本はないのかと言われてしまいそうだが、豊富に時間が残されている身ではないので、必要な本から手にすることになる。
 ステロイドというとすぐに「副作用」という言葉を連想し、顔をしかめる人が多いが、実際にはたいていの人が、一度はお世話になっている薬である。皮膚炎、ぜんそく、花粉症・・・。私は20年近く、リウマチの治療のために飲んできた。最初は5ミリ、のちに3ミリになった。それがこの3月末に、あっという間に終わりになり、それから何となく調子が整わない。たぶん離脱症状なのだろう。痛みは生活の意欲を削ぐ。

 リウマチは最初の1年半くらいは合う薬が見つからず、絶えず全身がきしむように痛んだ。ステロイドが出たときは、副作用は怖かったけれど、痛みで眠れないようなことはなくなり、やはり感謝した。必要なときには必要な薬だと、つくづく思った。

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(患者や家族向きに、ていねいな説明がある本です。こういう本は最新のを買うこと)

 ステロイドは自分の副腎で、毎日作り出されているらしい。それが薬として服用するようになると、副腎がさぼるようになってしまうのだとか。20年も飲んでいたのだから、私の副腎は作り方をすっかり、忘れてしまったのに違いない。70にもなって思い出すのかしら? 医者に聞いたら「時間がかかるかもしれないけど、出るようになる」と。
 わが副腎に、期待するしかないようです。




2018年6月 2日 (土)

『冷凍保存レシピ』   鈴木徹・監/牛尾理恵・料理  朝日新聞出版   

 300種ほどの食材の、冷凍と解凍のテクニックが紹介されている本で、豊富なレシピも載っている。似たような本は多いだろうが、新聞社らしいわかりやすさと、情緒のなさ(!)が私は好きだ。料理は愛情だ、なんていうのは苦手なので・・・。

 下味をつけたり、下茹でをしたほうがいい食材がたくさん出てきて、忙しい一家の料理番や、小人数の家族、昼間出かけると疲れてしまい、夕飯の支度に難儀する私のような高齢者向き。大型本ではないので、本棚でもじゃまにならないのもいい。

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(もうちょっと情緒のある本も読んでいますが、それらはいずれまた)

2018年5月30日 (水)

『医者には絶対書けない幸せな死に方』  たくきよしみつ  講談社+α新書

 シニアには必要な情報が載っている本である。ぎょっとするような題だが、現実がそうなのだからしかたない。著者はデジカメやパソコンの指南書を、わかりやすい上質な文章で書いている人で、福島出身・在住だったが、原発事故で日光に越した。その関係の著書もある。
 見出しをところどころ紹介するだけで、内容が想像できると思う。

死に方の理想と現実
老衰ではなかなか死ねない
「看取り医」を見つける難しさ
癌治療のやめ時と病院からの逃げ時
難しい認知症診断
「別人」になり変わる境界
成年後見制度の恐ろしさ
死に場所としての施設を見つける技術
「主役」の尊厳を軽視する日本の医療・介護現場

 これではたしかに、医者には書けない。
 94歳の母は、自分の希望を語る人ではなかった。私はどうしたらいいのだろう・・・。

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2018年5月17日 (木)

『東方年表』掌中版   平樂寺書店

 これも奈良土産なのである。買ったのは奈良博、つまり国立奈良博物館の売店。文庫本より小さな150ページ余の本で、文章などはない。中国、朝鮮、日本の暦と西暦が並んでいるだけ。初版は1955年で2013年に37刷。1ページ目に神武天皇1年=前660年=周・敬王とあり、最終ページは2020年となっている。

 時代小説だの歴史の本だのを読んでいると、私はいつの年月日のことなのだか、さっぱりわからなくなってしまう。それで買いました。文庫本より小さい本だが、机上版の大きいのもあるそうだ。

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(まるで面白くない本で、ネットでもわざわざ注文しなかったでしょう。旅先で巡り合ったものです)

2018年4月19日 (木)

『佐野洋子の「なに食ってんだ」』   佐野洋子  NHK出版

 佐野洋子の遺した絵本、エッセーなどから、食に関係した文を集め、絵や写真とともに食事典。挿絵は佐野自身が描いたもの、料理の写真は再現したものなので、たぶん息子さんの協力があるのだろう。食いしん坊で料理上手でもあった佐野洋子の魅力が、ずんずん伝わってくる楽しい本である。

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 レシピ本ではないので、料理の参考にはならない。でも無類におもしろい。子供のころの中国の思い出、お母さんの餃子の話、トンカツの肉をたたきすぎたこと、すっぱい焼きそばの作り方・・・・・・。

 佐野洋子は2010年に72歳で亡くなってしまった。残念で寂しい。

 ところでこの本の編者、オフィス・ジロチョーって何者なんだろう?

2018年3月30日 (金)

『〈女帝〉の日本史』   原武史 NHK出版新書

 日本はどうして女性政治家がこんなにも少ないのだろうか。教育などは均等に行き渡っているというのに。この本の書き出しは、こうした疑問から始まっている。いわゆる女性史の本とは違うと直感的に思い、読んでみることにした。直感は当たっていたようで、もうじき元号が替わろうという今、時宜を得た新書である。帯には「東アジアとの比較で日本をとらえ直す野心作」。
 終章から引用する。

日本で近代(明治)以降に強まった、女性の権力を「母性」や「祈り」に矮小化してしまう傾向は、(中略)女性の政治参加が憲法で認められたはずの戦後にあっても、女性を権力から遠ざけるという影響を及ぼしているように思われます。こうした状況が続く限り、日本で女性議員を増やし、女性の政治参加を増やすことは根本的に難しいと言えます。それを可能にするためには、(中略)男系イデオロギーによって隠蔽された「女帝」の日本史をもう一度掘り起こし、いまなお根強く残るジェンダー役割分業観を歴史的に相対化する視点を養わなければなりません。本書はまさにそのために書かれたことを、最後に強調しておきます

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(歴史的に相対化って、容易なことではありません。漢字も満足に読めないようでは無理です。ちなみに、原武史の『昭和天皇』『昭和天皇実録を読む』(ともに岩波新書)も、たいへんおもしろいです)
 

2018年3月16日 (金)

『陰謀の日本中世史』  呉座勇一  角川新書

 ベストセラー新書『応仁の乱』の著者が書き下ろした話題の本。扱っているのは保元・平治の乱、実朝の暗殺、本能寺の変など、だれでも知っている歴史上の大事件ばかり。それらにまつわるさまざまな「陰謀論」を、最新の学説でひとつひとつ検証し、トンデモ学説を一蹴するというのが、この本の大きな目的と、著者は前書きにも後書きにも書いている。最近はトンデモ学説の本があふれているのだそうで、そうした歴史のゆがんだ解釈から身を守るために、この本を読んでもらいたいと。著者はまだ30代、わかりやすくしっかりした文章で、70のバアサンでも楽しく読めた。
 歴史なんかどうにでも解釈できるというのが、偏らない歴史教育ではないのだ。

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(笑ったのが、著者が書いている「学者はその研究対象に似てくる」という話。たとえば公家の研究で、公家の気持ちになって資料を読解し続けていると、しまいには自分も公家に似てきてしまうのだそうです。もちろん研究者ですから、客観性をなくすわけではありませんが・・・)

2018年2月24日 (土)

『がん──4000年の歴史』上下  S・ムカジー/田中文・訳  ハヤカワノンフィクション文庫

 原題はThe Emperor of All Maladies──A Biography of Cancer。上下2巻、800ページを超える長編で、ピュリッツァー賞を受賞している。Amazonのレビューの評価も非常に高い。でも、とにかく長かった。長すぎると私は思う。4000年にもわたる癌の伝記ということだが、実際には19世紀の末ごろからの癌研究史で、素人が今に役立つ知識を得ようとするなら、下巻の200ページ目くらい、染色体の話が本格化するあたりから読んだほうがいいのではないかとさえ思った。もっとも、この長大な記述の中に、癌の複雑さや不可解さ、怖さが存分に出ているわけで、一を聞いて十を知るどころか、百を聞いても一さえおぼつかない高齢の私などには、話がおもしろいだけ、よかったとも言えそうだ。

がんはわれわれのゲノムに組み込まれている。無制御な細胞増殖を引き起こす遺伝子は、生体にとって決して馴染みのないものではなく、生命維持に不可欠な細胞機能を担う遺伝子の変質した、ゆがんだバージョンなのだ。(中略)ヒトという種の寿命が延びるにつれて、悪性の細胞増殖が避けがたく解き放たれてしまうのだ

 以前に、スーザン・ソンタグの闘病を息子が書いた本(『死の海を泳いで』D・リーフ著 岩波書店)を、読んだことがあるのを思い出した。ソンタグは40代で進行した乳癌を患って克服、それから約20年近くたって子宮肉腫を患い、これも化学療法を駆使して克服した。それは彼女の誇りになっていたはずだ。そして70代になって骨髄異形成症候群になり、72歳で亡くなった。このムカジーの本にはそのことが出てきて、彼女はおそらく前の2回の化学療法が原因で、骨髄異形成症候群になったのだろうと書いている。治療が新たな癌を呼ぶ・・・、癌の治癒とは何なのだろうと、一人の術後患者として、考えないではいられなかった。

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(実はまだ最後の2割を残しているのですが、疲れすぎないうちに・・・。この本を教えてくださったのは、まちこさん。感謝です)

追記 無事に読み終わりました。上下で800ページを超える長編でしたが、おもしろかったのです。21世紀になって、分子生物学の進歩とともに、癌の正体が解明されてきたのに、治療がなかなか思うようにならないというのが、現状なんですね。暗い本ではなく、闊達な新聞記事のようで、非常に読みやすいです。

2018年2月16日 (金)

『美術の力』  宮下規久朗  光文社新書

 総カラーの美術をめぐるエッセー。帯にはこうある。

いったい、美術にはどれほどの力があるのだろうか。心に余裕がある平和な者には楽しく有意義なものであっても、この世に絶望した、終わった者にも何か作用することがあるのだろうか

 著者はそれを自分で試してみているようである。後書きに4年前に娘を病気で亡くし、何事にも興味がなくなったとある。その中で巡礼のように各地の絵を見て回り、これを書いた。絵を見るとはどういうことなのか、深く考えられる文章が続き、心に残るものだった。
 もともとカラバッジョの専門家として有名な人で、この本にもイタリア絵画の話が多いが、絵巻物や藤田嗣治の絵など、日本のものも含まれている。読んでいるうちに、今までの自分の偏った印象が直され、一層鮮やかになった個所が、いくつもあった。著者は、絵を見るというのはかなり知的な行為で、知識を持って鑑賞したほうが得るものが多いと断言している。絵の前でボンヤリ感心して眺めているだけなのは、もったいないのかもしれない。

 耳が悪くなって以来、目からの情報に頼ることが多くなった。テレビより本、映画館より美術館がいい。

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(日本画にも詳しい方で、とてもおもしろかったです。四国の金刀比羅宮が美術品の宝庫だなんて、知りませんでした)

2018年1月21日 (日)

『我々はなぜ我々だけなのか』  川端裕人・海部陽介  講談社ブルーバックス

 副題は「アジアから消えた多様な人類たち」。実際の著者は科学ジャーナリストの川端氏で、理論的バックボーンはすべて海部氏。ほんの5万年前までアジアには、ホモサピエンス以外の「人類」が、たくさん住んでいたという、ドキドキするような本である。2003年、インドネシアで小さな人類「フローレス人」が見つかったときの驚きは、私でさえ記憶がある。人類は、猿人→原人→旧人→新人と順番に進化したと、大昔に習ったような気がするが、そんなに単純な話ではないらしい。交雑も充分に考えられるようだ。本の末尾近くにこうある。

ぼくたちの中に彼ら(文中のジャワ原人などを含む)はいて、ぼくたちの一部である。そのような可能性を感じるだけで、自分自身も、ホモ・サピエンスという種も、限りなく開かれた存在に思えてくる

 発掘現場を訪ね、研究室を訪れ、種としての人間とは何かに迷い、これからの人類進化の方向についても考える川端氏の文章は、とてもわかりやすくて、大きな旅に同行するような気持ちになった。

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(表紙の写真はフローレス原人の復元模型)

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