最近のトラックバック

books

  • 前田耕作: 『玄奘三蔵、シルクロードを行く』 

ウェブページ

読書メモ

2020年9月18日 (金)

『霧の彼方 須賀敦子』  若松英輔  集英社

 

須賀敦子の評伝。

著者の若松英輔は1968年生まれ、須賀敦子より40歳近く年少で、面識はない。1998年に亡くなった須賀を扱った本は、いまだにたくさん出ていて、私も何冊か読んでいるが、たいてい生前に交流のあった人の著作で、作品を論じながらも、思い出も多く語られている。しかしこの著者の場合は違う。縁はカトリック信仰だけといっていい。でもそれだけで、500ページ近い大著を吸い込まれるように読んだ。

私はキリスト教はほとんど知らない。だから須賀のエッセイも、イタリアの思い出話だと思って読んできた。でもこの本を読むと、それは須賀のほんの一面を表していただけで、むしろ信仰の海に浮かんだ小舟のような小品たちだったのがわかる。

須賀は死の直前に「やっと書きたいものが見つかった。いままでものはゴミみたい」と言ったそうである。しかしその書きたかった長編「アルザスの曲がりくねった道」は、わずかな草稿が残るだけで、書かれずに終わった。

須賀敦子の根底を語る評伝として、これからも残る本だと思う。また続きを書きたい。

537db7988eb949dda551a149c9fe52d0

(ここ20年、調子の悪いときは、いつも須賀敦子を読んで、凌いできました。濃い死の影を感じる作品ばかりだけど、それでも力づけられてきたと思います。子供の病気、自分の大怪我と大病、母の死んだときなど、ずっとそうでした)

 

2020年8月 6日 (木)

『チボー家の人々』 全13巻 M・デユ・ガール  白水Uブックス

 13巻はやはり長大で、読み終えるのに3ヶ月かかった。1ヶ月に4冊、私としては遅いほうだ。ほかにも読んでいたけれど。
初めは「チボー家のジャック」という若者向けの簡略版もあることだから、ジャックが主人公なのかと思っていたが、読んでいるうちに兄のアントワーヌがよく描けているのに気づいた。ジャック15歳から25歳、アントワーヌ25歳から37歳までの、まさに青春物語なのである。その只中に第一次世界大戦が勃発する。
 動員令の出た日、弔鐘がパリの街に長く打ち鳴らされるところは、深い印象を残す。それを契機に平和主義者だったはずのインターナショナルのメンバーが、次々と愛国者に変容していく。ジャックは、動員に応じることは戦争に加担することだと思いつめ、孤立する。アントワーヌは自分の属する集団に対する責任感から、軍医として参戦する。
最終巻は1918年、戦争が終わった年で、アントワーヌは毒ガス傷病兵として、南仏の療養所にいる。回復の見込みがないのは、自分が医師だったので悟っている。迫る死を目前に、科学者、無神論者として、恒久平和を望みながら日記を綴るところで、物語は終わっている。
 原作が書かれたのは1939年、すでに第二次世界大戦が始まっていた。日本で全巻が翻訳刊行されたのは、1952年になってからである。私が最初に読んだのは1962年くらい、半世紀以上も昔だが、全然そんな気がしなかった。時が流れたという無常感はあったが、物語としても、翻訳の文体も古さを感じないものだった。コロナ禍の自粛生活で、得難い本を読めたと思っている。

Img_1519
(わが家に咲いたユリ。まだ雨が降っていた時期のものです。13巻並べた写真が撮れずにいます)

 

2020年8月 2日 (日)

8月

8月になってしまった。子細あってブログの更新があまりできないが、本人は元気である。コロナ感染者はますます増大、気をつけながらなるべく近所で、用が足りるように工夫している。

先日、杉並区に住んでいる娘夫婦が、コロナの疑いでPCR検査をした。障害者のせいかもしれないが、検査は迅速、結果も翌々日には連絡してくれたそうである。陰性。ほっとした。娘たちはまだ40代だが、それでも繁華街などには行かないと言っている。だいたいが群がって騒ぐタイプではないから、ほんとにそうしているのだろう。

近所の公園が混み始めた。長すぎた梅雨が明けて、人工川は子供たちでいっぱい。

4304e927914a40459e614ecd791ad1fb

近くの緑陰の道は、私のいつもの散歩する所。感染拡大の歯止めがかからない夏になりそうで、シニアも適当な運動が必要、何とか工夫して過ごしていこう。

長編『チボー家の人々』13巻が、いよいよ最終巻に近づいてきた。第一次世界大戦で変わってしまったチボー家の面々、戦争突入を描いた「1914年夏 1〜4」は反戦小説で、今でも色褪せない魅力がある。1937年ノーベル賞受賞。全巻を通して死の描写が多く、また迫力がある。カトリック系の学校では禁書とされていたと聞くが、もっともかもしれない。読み終わっったら感想を書いてみたい。

 

 

2020年5月15日 (金)

赤い本 『チボー家の人々』

 高野文子『黄色い本』を読んで以来、ずっと気になっていたマルタン・デュガールの『チボー家の人々』を、ついに読み始めた。白水社のUブックスで全13巻。赤い本なのである。100年も前のフランス有産階級の話だし、読み通せるのかなあという感じがして、なかなか手にする気になれずにいた。外出自粛の日はまだ続きそう、長編もいいかなと思った次第。
 まだ2巻しか読んでいないが、これがとてもおもしろく、時代の違いから来るはずの違和感もない。20世紀初頭のパリの家族風景が生き生きと伝わってきて、主人公の兄弟二人の行動や心理も、フランス伝統の心理小説を引き継いでいるように感じる。15歳のジャックがどのように成長していくのか、楽しみである。後半の8巻目以降は、第一次世界大戦前夜のヨーロッパの世界情勢が深く影響しているそうで、マルタン・デュガールは「1914年夏」という章で、1937年にノーベル賞を受賞している。
Img_0701

(高校時代に学校図書室で借りて読んだことがあるのですが、お恥ずかしいことにあまりよく覚えていません。そのとき40歳前後だった母が、私より熱心に読んでいました。母は1924年生まれ、何を感じて読んでいたのか、今はもうわかりません。聞いておけばよかった)

2020年5月 3日 (日)

『黄色い本』  高野文子  講談社

 題のとおり黄色い表紙が鮮やかだ。副題に「ジャック・チボーという名の友人」とあるように、マルタン・デュガールの長編小説『チボー家の人々』を読む少女の物語で、うちにある唯一の漫画本かもしれない。初出は1999年ということだから20年以上前、少女は新潟に住む高校生で新潟弁をしゃべる。

 原作の長編小説は5巻もあって、少女は学校の図書館で借りて読んだ。主人公のひとりのジャックに心を寄せながら。私も高校生のころ、同じようにして読んだことがある。この原作が黄色いフランス装のおしゃれな本だったのは、よく覚えている。ジャックは反抗する次男だった。私は自分が長女だったせいか、反抗できる立場にない長男のアントワーヌに興味を覚え、医者になった彼が第一次世界大戦に従軍し、毒ガス兵器で肺をやられてしまうところなどが、強く印象に残っている。

 漫画の少女はジャックが好きだった。作中のインターナショナル運動に心を寄せ、想像の中で登場人物たちの会合に参加する。原作の舞台は1914年、著者の高野さんにとっても遠い昔のことだろうに、漫画の少女は生き生きと彼らのことをずっと考えながら、5巻を読み終えて本に別れを告げ、高校を卒業して就職する気持ちになる。とても羨ましい読書体験本。

Img_0667
(原作は白水社の新書版で13冊。読み直してみたいような気持になりました)

2020年4月 9日 (木)

『潮目の予兆』  原武史  みすず書房

 2013年から15年にかけて、雑誌「みすず」に連載した日記。8ポ2段組みで329ページもあるが、日記なので読みやすい。ちょうど『皇后考』を連載していた時期にあたり、資料集めに奔走する姿がよく出てくる。また関係のある土地をよく訪ねているのに驚いた。鉄道の話も多い。朝日新聞の書評委員をしていて、専門書以外も精力的に読んでいる。バイタリテイーにあふれた人だ。
 食事の話がよく出てきて、麺類好きなのがよくわかる。健診で高コレステロールを指摘され、ラーメンの食べ過ぎではないかと思い、すぐにウォーキングを始めるのも笑える。コロナ禍で本を読むくらいしかできないので手にした本だが、楽しかったし資料の探し方などで感じることが多かった。

Img_0623

2020年3月23日 (月)

『ペスト』  アルベール・カミュ   新潮文庫

 新型コロナウイルス肺炎以来、増刷を続け、新潮文庫のドル箱になりつつあるのだそうである。昔、大学生だったころ、サルトルなどと一緒に読んだ本で、実に50年ぶりの再読。原作は1947年。

 アルジェリアのオランという港町が舞台である。ある日医者のリウーはアパートの階段の真ん中で、ネズミが一匹死んでいるのを見た。ペストの発生である。街は封鎖され、医者と住民はこの致死率の高い恐ろしい伝染病と、長く戦うことになった。門番、喘息持ちの老人、運悪く滞在していた新聞記者、検事、犯罪者、聖職者、子供たち、住民すべてが巻き込まれて、多くが死んでいく。なぜこんな理不尽なことに耐えねばならないのか、生にどんな意味があるのか、実存主義文学の傑作といわれるだけあって、淡々とした描写のなかに迫力があり、内容を覚えていたにもかかわらず、深い感銘を受けた。

 哲学はともかく、今のご時世に役立ちそうな知識を、この名作から。

 1. 患者はすぐ隔離して治療。相部屋でよい。
 2. 家族などの濃厚接触者も、すぐ隔離。個室で別々に。一定期間が過ぎたら解放。
 3. 街と港湾は完全に封鎖。誰も出入りできない。
 4. 住人のボランティアによる保健衛生部隊の編成。

 カミュはこれを第二次世界大戦中に書き始め、何年もかけて完全したそうである。たぶん対独抵抗活動をした経験が、作品の迫真性を生んでいるのだろう。それにしても、今の状況にぴったりしすぎである。
 訳文が固くて古く、ときに読みにくかった。50年前には平気だったのに……。新訳が出るのを期待している。

 

 

8c5d81ef8bf5433cb4bca9d9c9b1a6b0

2020年3月20日 (金)

『地形の思想史』   原武史  角川書店

 難しそうな題だが紀行文で、雑誌「本の旅人」などに連載されたものをまとめた本。旅先は日本国内だけ。第1章は静岡県浜名湖にある岬、上皇夫妻が3人の子供たちと夏を過ごした場所である。第2章は東京奥多摩の大菩薩峠、連合赤軍事件に関係がある。第3章は瀬戸内海の長島、ハンセン病施設の話で神谷美恵子のことも出てくる。第4章は富士山の麓の上九一色村、オウム真理教などの話。第5章は・・・・・・、いい加減にしておこう。
 いずれも簡単には語れない地域ばかりで、政治思想学者としての原と鉄道マニアとしての原が、自然に同居していておもしろい。通奏低音のように、戦後の象徴天皇制についての考察があって、私たちに常に影響を与えているのだとつくづく思った。

Img_0607

2020年2月20日 (木)

水仙

 少し日が長くなったような気がする。暖かくなり花粉が飛び始めた。毎年この時季はマスク姿で外出することにしているので、我が家にはマスクがたくさんあり、新型肺炎のために買い足す必要はない。

 団地の1階に住んで20年になる。小さな庭があって、膝の手術をするまでは、よく庭仕事をした。手術をしてからは深くしゃがめなくなり、草むしりができない。それでも去年の秋には球根を植えた。今は水仙がたくさん咲いている。

Img_0561

 高齢でリウマチがあり免疫抑制剤を飲んでいるため、都心に出かけるのは当分無理なようで、先日も高校時代の友人との集まりも中止になった。しようがないから、感染症が蔓延するってどういうことなのか、kindleで新書を買って読んでいるところである。

41mihgmc6l

 とても分かりやすい本で、鳥インフルエンザ、SARS、MERS、エボラなどについて、教えてもらった。2016年に出た本だが、コロナウイルスについても書かれている。具体的な予防法が書いてある本ではないが、パンデミックの予備知識を得るのはいい本だと思った。どういうわけだか、Amazonでは紙の本が品切れらしく、kindle版の3倍の値がついている。マスクの値上がりを連想してしまった。

2020年2月15日 (土)

外出できないので・・・

 どうも新型ウイルス肺炎は蔓延しそうな気配だ。私は70代で免疫抑制剤を飲んでいるので、当分、出かけないようにするしかない。公園内の散歩とか、近所のジムやスーパーくらいは、行きたいものだけれど。

 庭の椿が咲き始めた。小さなワビスケ系である。縁は鳥が齧ってしまいギザギザ。椿は甘いらしく、ヒヨドリやメジロがよく来る。
Img_0554

 iPadでもブログを更新しやすくするため、Evernoteの参考書を買った。Amazonのレビューを参考に選んだのだが、うちに届いてから著者が向井領治さんだと気づいた。ずっと以前にiPadを使い始めたころ使った教則本の著者で、とてもわかりやすかったのを思い出し、うれしくなった。しばらく出かけられないのなら、これでEvernoteを使う練習をしよう。

Img_0552 

 いまさら面倒なことはしたくないのだけれど、Macヘビーユーザーの友人の一言、「Evernoteはなんでも入れておけるから便利よ」につられてである。アプリは無料。ちょっといじってみたら、なるほど写真も動画も文章も、思いついたまま書き込めるのがわかった。iPad miniを使いだしてからずいぶんになるのに、無知が恥ずかしいです。

 

より以前の記事一覧

2020年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ