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2016年5月28日 (土)

『ひきこもり文化論』  斎藤環 ちくま学芸文庫

 表紙の石田徹也の絵「飛べなくなった人」がすごいインパクトで、思わず手にとった。斎藤氏は現役の精神科医で、ひきこもりの支援や治療に詳しい人として、とても有名である。この本は治療の話ではなく、その文化論の集大成。こうすればよくなるという本ではない。
 子供のひきこもりに苦しむ人は多い。うちから出ないだけではなく、家族に暴力をふるったり、ネットで際限なく浪費したり、処方された薬を乱用するなど、厄介な事態に発展していくのが珍しくない。一般に、親や親族がやっきになって関わっている間は、よくならないことがほとんどで、私の貧しい見聞でもそうである。「家族って何だろう?」と考えてしまう。
 
人間は去勢されることによって、はじめて他者と関わる必要性を理解するようになります。逆に、人間は去勢されなければ、社会システムに参加することすらできません。(中略)このとき「母親─息子」ユニットを主軸とする甘え文化は、去勢に対してしばしば阻害的に作用します
 
 「去勢」というのは、女性の場合にもあてはまるラカンの概念(象徴的に父親を意味する)らしいのだが、私にはうまく説明できないので、関係書物をご覧ください。
 母親はひきこもりの息子(なぜか男性が多い)を、何とかしたいと懸命に努力する。「他人と出会えば快方に向かう」などと説教されても、他人なんか誰も近寄って来ないのが現実だ。医者だって逃げ腰。どうしたらいい? どこかに関わってくれる「他人」がいないか、家族はさまようように探すことになる。本人はたいがい何もしない。
 別の本によれば、こじれたひきこもりの場合、斎藤先生は親に患者を)追い出せば?」とか、「(母親に)あなたが出ていけば?」とか、アドバイスすることもあるようだ。もしかしたら、そういう行動をサポートする施設が、必要なのかもしれない。
 
P1050667
(よく聞くのが「親の育て方が悪い」「本人が怠け者で性格が悪い」という意見。簡単にものごとを考えるのが流行して、まさに「事態はゆっくりと深刻化しつつある」ようです。大勢のひきこもり人が高齢になったら、無年金の人が増えて、社会福祉制度そのものがおかしくなります)

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