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2015年11月21日 (土)

『服従』 M・ウェルベック 大塚桃訳 河出書房新社

 先日のパリでの大きなテロ以来、すっかり有名になったフランスの小説で、私はこの本の名を少し以前に、内田樹のツィーッターで知った。内田はもともとフランス文学を学んだ人である。この本については、今年初めのシャルリー・アブド誌襲撃事件直後に書かれた浅田彰の長い文章が詳しいhttp://realkyoto.jp/review/soumission_michel-houellebecq/。私はフランスもフランス文学もよく知らず、内田の「おもしろい!」という言葉に好奇心をそそられて、読んでみたというわけである。おもしろかった。
 主人公はフランソワというパリ大学の文学部教授、2022年のフランス大統領選挙でイスラム政党が勝利し、大学がイスラム化されて失職する。やがてユイスマンスの専門家として、ある叢書の編纂に参加するのをきっかけに、大学に再び近づき、最後はイスラムに改宗して再び教授の席に戻るというのが、だいたいのあらすじである。
 このフィクションの中に、どこまで現実のフランスの政治社会が書かれているのか(実在の政治家名がたくさん出てくる)、またこのいささか情けない主人公の言動が、どこまでありそうな話なのか、よくわからないのだが、主人公=フランス自身という解釈は、かなり戯画化されているにしても、当たっているのかもしれない。それも知識階級である。活力のなさ、現状を追うに精一杯の政治分析能力、結婚もせず、安定した人間関係も持てず、刹那的な快楽にふける・・・。そこに入ってきたのが、「穏健」なイスラム勢力だったという設定だ。そしてイスラム政権になって、治安は安定に向かい、女性は労働市場から姿を消して、結果として雇用率が上がる。資本主義、民主主義、民族主義の敗北である。
 ヨーロッパは疲れている。日本もそうだと感じないわけにはいかなかった。

P1050464
(このような本について、かつてよく語り合った村井健さんが亡くなりましたhttp://blogs.yahoo.co.jp/pu_sikin。とても寂しいです。ご冥福をお祈りします)



 

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