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2015年1月15日 (木)

『敗北を抱きしめて』上・下  ジョン・ダワー/三浦陽一ほか訳 岩波書店

 1945年の敗戦の後の、おもに連合軍占領下の日本を描いた大作。上巻は焼け跡の混乱した日本の社会、下巻は占領軍の統治の実際の姿で、東京裁判を含む下巻のほうが読み応えがあった。
 私は戦後生まれで、小さいときに傷痍軍人の姿を駅で見て、怖かったという思い出がある程度である。それでもこの本を読むと、あのころの日本人が自分たちの敗戦をどう受け止め、そして新たにどんな社会を本気で望んだのだろうかと、考えないではいられない。今では見えなくなった可能性も、いろいろあったようにも感じる。
 私の父は山陰の旧家の生まれで、国粋主義とはいかないまでも、かなり保守的な感覚の人だったが、あるとき「戦争に負けてよかったんだよ。あのままじゃ、たまらなかったよ」と言ったことがある。父はそれ以上語らず、戦争についての複雑な思いは、胸にしまったまま亡くなった。父のこの本の感想を、聞きたかったと思う。
 当然ながら、アメリカ人の視点で書かれているが、アメリカ軍の対日政策には、かなり批判的で、当時の日本の上層部についても厳しい。ネットのレビューには、ダワーの「上から目線」を指摘するものもあるが、私は、特に下巻では、あまり感じなかった。
 上下2巻の大作の最後は、こう結ばれている。

・・・日本の戦後システムのうち、当然崩壊すべくして崩壊しつつある部分とともに、非軍事化と民主主義化という目標も今や捨て去られようとしている。敗北の教訓と遺産は多く、また多様である。そしてそれらの終焉はまだ視界に入ってはいない

P1020307
(この本を読んでいると言う人が、周囲に3人もいます。そのうちのひとりの旧友が「ダワーはいいねえ」と言ったその一言で、読み始めたものです。内容を批判する力は、私にはありませんが、読んでよかったと思います。読み物としておもしろくもありました)

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コメント

著者はアメリカ人ながらよく調べて分析していると思います。
民主主義も婦人参政権も日本が勝ち取ったモノではないということを、改めて感じます。日本戦後史としてより多くの人に読んでほしいと思います。

旧友はアメリカの「日本学」の系譜に詳しい人でした。
その人が勧めるのだから、おもしろいんだろうと、乗ったわけです。
ダワーの学位論文は、森鴎外だったそうで、文学研究者の面影がちょっとあるような気がします。

奥さんは日本人、ドキュメンタリー映画「日本国憲法」にも登場していました。
しっかりした日本通ですね。

この本も、よくある日本人空っぽ論ではないのが、著者の優れたところだと思います。
占領軍から降りてきた「民主化」に応える何かが、あのころの日本に、確かにあったのを感じる内容でした。

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