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2014年3月30日 (日)

『古今著聞集──物語の舞台を歩く』 本郷恵子 山川出版社

 『古今著聞集』は中世に生まれた説話集で、エピソード集のようなものである。ひとつひとつの話は、長くて物語りふうのもあれば、尻切れトンボの中途半端もある。原文には、貴族・僧侶はもちろん、盗賊・博打打ちから犬や猿まで出てくる。この本は、古い説話集を中世史家の本郷氏の現代語訳と解説で楽しんでいるうちに、鎌倉から室町に移っていく社会の変遷と、当時の人々の暮らしの変化を感じられるような仕組みになっている。見開きの左ページには本文、右ページには関連のある絵巻物や建物の写真、登場人物の系図などが載っていて、わかりやすい。
 この時代、読み書きするのは、それなりの階層の人だった。でも平安時代の宮廷人と違って、自分たちの暮らしや考え方が、もはや万全でないことを、強く自覚していた。そこがこうした中世文学の、いちばんの魅力なのかもしれない。

・・・正しい唯一の先例があるわけではなく、それぞれの先例は、実際の振る舞いを正当化するための材料にすぎない。『古今著聞集』は、つねに心の風通しをよくしておこうとする、柔軟で成熟した知性の産物であった。その基底には、人間の実存に対する楽観と、自在な諧謔精神が存在していたのである

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