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2013年6月 8日 (土)

『黄色い髪』 干刈あがた 朝日文庫

 四半世紀ほど前に、朝日新聞朝刊に連載された小説。イジメと登校拒否問題を、子供とその母親の立場で真っ正面から扱って問題となり、連載当時は担当者に、賞賛とともに非難の投書が数多く届いたと聞く。
 舞台は東京郊外の中学校。夏美という2年生の女の子とその母親の史子が主人公である。夏美はイジメに遭っている子をかばったのをきっかけに、自分がシカトの対象になり登校しなくなって、夜の街を徘徊し始める。史子は心配で事情を学校に問い合わせたり、夏美の級友の親に聞いてみたりするが、何の効果もないどころか、夏美の心はますます親から離れ、すさんでいく。途方にくれた史子は自分も夜の街を歩き、疲れ果てたあげく道端に座り込む・・・。いつのまにか史子は、夏美と同じ高さの視線で世界を、生きる意味を見つめるようになっていた。
 史子は登校拒否の子供の心に寄り添うことで、「正しく生きようと思ったら、死ぬしかない」(作中の少年の言葉)ほど過酷な社会のあり方に目覚めていく。答えも解決もない世界を、確たる規範も持たず、素手で生き抜くしかないのは、親も子も同じだということに気づくのである。
 「黄色い髪」という題は、不登校を決めた夏美が髪を脱色する場面から取られている。母親の史子も、夏美の気持ちを想像しながら、オキシドールで自分の髪を黄色くしようとする。物語の後半で、夏美は学校に戻り、自ら中卒のまま就職する道を選ぶことになるが、この決断が夏美自身の成長の結果として描かれているのが、「母親作家」干刈あがたさんの観察のすごいところである。
 カバーに「社会派小説」とあるが、そうした言葉ではくくれないほど繊細に、思春期の子供とその母親の心の孤独を描いた秀作で、今日でも読み返される価値があるのではないかと私は思っている。

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(ムラサキケマンだと思うのですが・・・。上の文は1997年に、ある小さな新聞のようなものに、私が書いたものの再録です


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