最近のトラックバック

« お昼時 | トップページ | 川越の刃物店 »

2011年12月12日 (月)

『江戸=東京の下町から』 川田順造 岩波書店

 副題は「生きられた記憶への旅」。著者は深川の生まれで、幼時をそこで過ごした人である。長じてフランスに留学、レヴィ=ストロースに師事して文化人類学者になった。この本は、著者の生まれ故郷のフィールドワークを中心とした、文化人類学的な本であって、江戸情緒とはあまり関係がない。
 かつて豊かな自然が残っていた江戸・隅田川を、今のように無残な姿に変えてしまったのは、日本人が持つ自然への一種の「甘え」のせいなのではないかという指摘には、目を開かれた。また歴史的に言えば、明治の薩長政権が東京から、徳川=江戸の匂いを抹殺しようとした結果でもあろうという。たしかに、船で日本橋川や神田川を巡っても、見られるのは建物の後ろ姿ばかり、過去の栄華のかすかな名残だけである。

日本では「自然美への崇敬がある一方で、自然環境と折り合いをつけるときには、極めて粗暴な手法が用いられることもある」。日本人にとって、「自然と人間は、気脈を通じ合った仲間同士」なのだから、「自然への対し方も、ときによって使い分ける」。日本を知り、日本を愛している、いまは故人となられたレヴィ=ストロース先生の言葉だ

 江戸を支えたのは、千住から埼玉県東部、かつて「北葛飾郡」と呼ばれた地域だったという。東北にも強い親和性があるそうで、芭蕉の「奥の細道」の考察など、国語の時間で習ったより、ずっとおもしろく感じた(歳のせいもあるかも)。私は城南の多摩川近くで育ち、東京の北西部や川向こうをよく知らない。今度は千住にも行ってみようと思う。

R0010518
(以前に書いたことがある『母の声、川の匂い』(筑摩書房)の続編のような趣の本。レヴィ=ストロース夫妻と一緒に船で川巡りをした話とか、某NPO主催の「おくのほそ道旅立ち追体験ツアー」に参加した報告などもあって、本所深川の現在がよくわかります。著者の育った所と夫の本籍が、すぐ近くなのがわかって驚きました)

« お昼時 | トップページ | 川越の刃物店 »

読書メモ」カテゴリの記事

コメント

「自然への甘え」は日本人の自然観の根幹にあるものなのかもしれません。

そうかもしれませんねえ。
こうした「下町もの」の本の中では、群を抜いておもしろかったです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548051/53467678

この記事へのトラックバック一覧です: 『江戸=東京の下町から』 川田順造 岩波書店:

« お昼時 | トップページ | 川越の刃物店 »

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ